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FD姿で祥子達のマンションを訪れてから3日ほど経った木曜日の夜、祥子から電話がある。 まず、『祐治さん。 先日は素敵な祐子さんをご紹介して下さいまして有難うございました』と祥子の笑いを含んだ声が響いてくる。
『どう致しまして』と私も笑いながら応える。 『祥子達に会えて祐子もとても喜んでいたよ』
『あら、そう。 それはよかったわ。 この前は大分痛めつけたので、お身体に障ってはいないかって心配してたの』
『うん、それは何ともないようだね。 すごく元気だった』
『ああ、よかった。 それにしても祐子さんも祐治さんに似てタフね』
『そうだね』
2人で声を合せて笑う。
『それで、祐子さんにはこの次は何時ごろにお眼にかかれるかしら』
『そうだね。 ちゃんと会わせるのは秋までは無理だと思うけど、ちょっと顔を見せるだけならその前でもチャンスはあるかも知れないな』
『そうね。 是非、お会いしたいわね』
祥子はそこまで言って一息入れ、改めて用件に入ってくる。
『それで早速ですけど、あたし達の「かもめの会」の第1回の定例の会は、次の28日の土曜日に開くことになってたわね』
『うん、そうだったね』
『ええ、それでね、あの会を28日の午後に孝夫の家で開こうと思うんだけど、どうかしら』
『え、孝夫君のお宅でかい?』
意外な話に私は思わず聞き返す。
『ええ、そう』
『そんな、孝夫君のお宅でプレイをさせて貰って、いいのかい?』
『ええ、いいの。 実はこの話は今日の午後にあたし達が孝夫と街で偶然出会って、一緒にお茶を飲んだときに決めたの。 初めはあたしもあたし達のマンションか祐治さんのマンションでと考えていたんだけど、今日、孝夫と話をしてたら、この週末は孝夫の家の人が皆でどこかに行かれることになったんですって。 そこで孝夫一人で留守番するそうなので、自由にプレイをさせて貰えるというのよ』
『ふーん』
『それに今までも、おうちの人がお留守の時にはあたしと美由紀がお邪魔してプレイをさせて貰ったことが何回かあるの。 孝夫のおうちには色々と設備や道具が揃っていて、プレイをするのにとても便利なのよ』
『え、プレイのための設備や道具?』
『いいえ、もちろん、プレイのために作ったんじゃないわよ。 だけど、プレイにもとても便利に使えるという意味よ』。 向こう側から祥子の笑い声が聞こえてくる。 『例えば、プレイにぴったりな素晴らしい地下室があって吊りなども簡単に出来るし、真っ暗な密室にすることも出来て、何をしてもとても感じが出ていい、だとか』
『ふーん』
『それに差動滑車や、この前、あたしのマンションでお見せしたのと同じ柱縛りのスタンドやそれに付ける色々なパイプなども揃っているの。 だから、第1回の定例の会にふさわしい豪華なプレイが出来るわよ』
祥子の説明にも熱が入る。 私もがぜん興味がわいてくる。
『ふ-ん、それはいいね』
『そうでしょう?。 だから孝夫の家に決めたんだけど、どうかしら』
『うん、自由にプレイをさせて貰えるなら文句はないよ。 それに僕もその地下室とか、色々な設備とかを是非見せて貰いたくなったし』
『まあ、よかった。 それじゃ、孝夫の家に決めるわよ』
『うん、いいよ』
私は第1回の定例の会のプレイにだけではなく、孝夫のお宅にも大きな期待感と好奇心とをそそられて、すっかり浮き浮きした気分になる。
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『所で孝夫君のお宅はどこにあるの?』
『ええ、孝夫の家はね、世田谷区のT町の高台にあるの。 今は周りに家が建て込んでいるけど、昔は近くにほとんど家がなくて、とても閑静な所だったんですって』
『ああ、T町の高台?。 それはいい所だね』
『ええ。 昔、孝夫のお祖父様がそこがすっかり気に入って、土地を買って工場と倉庫を作り、その隣りに住宅も建てて住み付いたんですって。 今は工場は郊外に移転したけど、住宅と倉庫はそのままにして住んでおられるの。 敷地も広くていいところよ』
『なるほどね』
私は住宅地の高台にある昔風の閑静な住宅を頭に浮かべる。 なるほど、いい所だろうな、と思う。
『それでどう行ったらいいのかな』
『ええ、それは初めてだと分りにくいから、孝夫に祐治さんのマンションまで迎えに行って貰うことになってるの』
『でも、わざわざじゃ悪いな』
『いいのよ。 実はあたし達も渋谷でケーキを買って、そこで孝夫の車に拾って貰うことにしたの。 だから祐治さんのマンションならほとんど通り道みたいなものなのよ』
『うん、それならいいけど』
私は納得して、次の質問に移る。
『それで時間は何時に来てくれる?』
『そうね。 なるべく早くがいいけど』。 祥子は電話の向かうでちょっと考えている様子。 『あたし達は早いお昼をすませてここを出る予定だけど、渋谷へ行ってからケーキを買う時間もあるから、拾って貰うのがやっぱり1時頃になるわね。 でも、1時半前にはそこに行けると思うけど』
『うん、いいよ。 その頃になったらマンションの前に出て待っている』
『ええ、そうして』
『うん』
『それから』と祥子は話を続ける。 『今度の会は、あたし達「かもめの会」の第1回の定例会だから、色々とそれにふさわしい豪華なプレイをしたいと思ってるの。 だから祐治さんも色々なプレイの用具をちゃんと用意しておいてね』
『うん、いいよ。 でも、どんなプレイをする積りなんだい』
『ええ、この前、祐子さんにしてあげるって約束したことや、孝夫に見せてあげるって言ってあったことがあったでしょう?』
『うん、そうだね。 柱縛りとか、タバコ責めとか』
『ええ、そう。 それで今度は最初の定例の集りだから、まずはその宿題を片付ける意味もあって、最初に祐子さんにあのスタンドを使って色々な縛りやタバコ責めをしてあげようかと思ってるんだけど』
『ああ、まずは祐子が主役かい。 それもいいけど、こう暑くなっては、祐子は出掛けて行くのが嫌だと言ってるんだけど』
『あら、そう。 それは残念ね。 それじゃ祐子さんの代りに祐治さんで我慢しておいてあげるわ』
『ああ、それは有難う』
『どう致しまして』
電話の向こうでまた祥子の笑う声がする。
『最初はそう言うプレイをするとして、まだ後にも何か考えてるのかい?』
『ええ、美由紀に何か面白い吊りをして上げようと考えてるの。 だって、この記念すべき第1回の会合で美由紀に何もして上げないと、Mの仲間はずれにされたようで可哀想でしょう?』
電話から何か横で『む、む』というくぐもり声がしているのが聞こえてくる。 『あ、美由紀だ』と直覚する。
『あれ?、美由紀もそこに居るのかい?。 居たらちょっと美由紀の声も聞きたいな』
『ええ、美由紀はそこに居ることは居るの。 でもちょっと手が塞がっていて電話には出られないの』
また、『む、む』という声が聞こえる。
『ふーん。 手だけじゃなくて、口も塞がってるんじゃないのかい?』
『ええ、そう。 祐治さんも察しがいいわね』
『うん、毎度のことだからね』
『そうね』
また祥子の笑い声が聞こえて来る。
『じゃ、仕方ない。 美由紀の声を聞くのは諦めるか』
『ええ、そうなさい』
『うん』
これで用件はほぼ終る。 また祥子が言う。
『じゃ、これで連絡事項はいいわね』
『うん、僕の方はすっかり分かった』
『それで、今回は特に孝夫に見せてあげたいから、Hセットやタバコ・プレイの用意を忘れないでね』
『うん、分かった』
『それじゃ、こんどの土曜日の午後、1時半頃までには祐治さんのマンションまで迎えに行くから、入口の前で待っててね』
『うん、きっと待ってるよ』
『じゃ、これでいいわね?』
『うん。 ただ、美由紀と孝夫君にもよろしくって言っといてくれる?』
『ええ、言っとくわ。 じゃあね』
電話が切れる。