1
西伊豆でのプレイ合宿が終ってから1週間余りがたち、8月も最後の日となった日曜日の午後、また「かもめの会」のメンバー4人が孝夫の家の応接室に顔を揃える。 これは、西伊豆合宿での写真が出来上った、との連絡が孝夫からあり、祥子を中心に電話連絡をした結果、今日が丁度月末の日曜日なので、慣例に従って第3回月例会を開いて、みんなでそれを眺め、今度の合宿について語り合い総括しましょう、ということになったのである。
まず、美由紀がポットのお湯でお茶を入れて4つの茶碗に注ぎわけ、祥子がそれらを皆の席の前に配る。 そしてそれが終ると祥子が『さあ』とうながして、さっそく美由紀の手首を後ろ手に縛り合せる。 美由紀は何時ものことなので、ごく自然に両手を後ろに回し、おとなしく縛らせる。 みんなが席に着き、お茶をすする。 美由紀にはまた例によって祥子が飲ませている。
さっそく会話が始まる。 まず、今度の合宿が楽しかったね、というところから始まって、すぐにプレイの話になる。
祥子が言う。
『しかし、よくプレイをしたわね。 向こうに着いた日の祐治さんの両手吊りから始まって、吊り初め、地下室でのタバコ責め、渚の逆えび、本格的生き埋め、それから』
祥子は指を折って数え始める。 しかし、すぐに諦めたかのように止めてしまう。
『そうね、数え切れないわね』
そして孝夫が言う。
『しかもその大部分が、祐治さんが一人で受けたプレイなんだからすごいですね。 よく身体を壊さない、と思って感心してました』
『そうよ、そうよ』と美由紀も勢い込んで言う。 そして続ける。 『少しは祐治さんの身体のことも考えないとだめよ』
その真剣な顔を見て、何時ものことながら美由紀達の心配を有難いと思う。
『うん、有難う。 でもお陰様で、身体への悪い影響はなかったようだね。 帰ってきた当座は身体の節々に少し変な感じもあったけど、それも2~3日するうちにはすっかり直ってしまったし』
『タフですね』
孝夫がつくづく感心したという顔をする。
『そうよ』と祥子が笑いながら言う。 『祐治さんはプレイとなるとがぜん張り切って、いくら痛めつけても大丈夫になるのよ』
『こいつ、調子に乗って』
私は祥子をにらむ。 祥子が肩をすくめる。 皆がどっと笑う。
また一口お茶を飲む。 そして話題を変えて祥子に訊く。
『それで今日の予定はどうなってるのかい』
『ええ、電話でもお話しした通り、今日は主にこの間のプレイの写真を鑑賞して楽しい思い出を語りあったり反省したりして、それに例の貨物輸送プレイの可能性についても話し合いをしたら、と考えているの』
『うん、それから?』
『それから?』
祥子は一瞬、ちょっといぶかしげな顔をして聞き返す。 そしてすぐにうなずいて言う。
『ああ、プレイのこと?』
『うん、そう』
祥子は笑い顔を見せる。
『そうね。 今日は特にはプレイの計画は立てて来なかったけど、でも後で何かやってあげるから心配しなくてもいいわよ』
『いいよ。 予定がなければ、そう無理してやってくれなくても』
『でも、祐治さんがこの1週間余りの間をプレイなしで我慢してて、期待に胸を膨らませてご出席あそばされたのに悪いもの』
『どういたしまして』
横では美由紀と孝夫が笑いながら2人の応酬を聞いている。 私は今日行なうプレイのことはともかくとして、祥子の言ってたもう一つの話題が気になって訊いてみる。
『ところで今祥子は貨物輸送プレイの可能性って言ってたけど、それについて何か進展でもあったのかい?』
『いいえ、特にはないけど、でも実際に実行する時にはどんな荷造りをして、どんな方法で送るか、などを話し合うのも楽しいんじゃないかと思って』
『うん、それもそうだな』
私もうなずく。
2
皆の茶碗が空になる。 早速に祥子が言う。
『じゃ、とにかくそう言うことで、まずプレイの写真の鑑賞から始めましょう』
『うん』、『ええ』と応えて、皆が同意する。
『それじゃ、アルバムを持ってきます』と言って、孝夫は立ち上がって部屋を出て行く。 残った私と祥子がテーブルの上の茶碗などを一方の隅に寄せる。
すぐに孝夫がポケットアルバムを5冊ばかり重ねて、両手で抱えて戻って来る。 そしてそれらを重ねたままテーブルの上に置く。
『これがあの時の写真のアルバムです』
一番上のアルバムの表紙にかもめのデザインがあしらってあるのが見える。 残りの4冊の表紙もかもめの画のデザインなんだろう。 そして5冊のアルバムに詰まっている写真の数に思いを馳せる。
『随分あるね』
『ええ、でも、これでも撮った写真全部ではなくて、主としてプレイに関係した写真だけを選んで、その中でもかなり精選した結果です。 全部だとプレイの写真だけでもこの2倍以上になります』
『ふーん。 そんなに撮ったのかい』
『ええ、向こうに居た7日間、毎日毎日プレイをしてましたからね』
『うん、それもそうだね』
祥子が笑いながら言う。
『とにかく記録係が勤勉だから助かるわ』
それには構わずに孝夫はつづける。
『それからこの他にあの時撮った8ミリも出来上がってきてますから、それも後で映して見ましょう』
『そりゃ、大変だ。 もう見るだけで今日1日かかりそうだな』
『そうね』
祥子がにやりと笑う。
『うっかりするとプレイをする時間がなくなりそうね。 そうなると祐治さんにお気の毒だから、さっそく見せて貰いましょう』
『そう、僕にかこつけなくてもいいだろう。 本当は祥子の方がもっと残念なんじゃないのかい?』
『どっちでもいいわよ。 とにかく早く見ましょう』
祥子は強引に矛先を逸らし、また私の顔を見てにやっと笑う。
そこで孝夫が、『ここのテーブルは低くて、みんなで一緒に写真を見るには向いてませんから、食堂に行きませんか?』と提案する。 『それもそうね』ということで皆が立ち上がる。
祥子が5冊のアルバムを持ち、私と孝夫がポットと急須と、それに汚れた茶碗とを持って食堂に移動する。 美由紀は後ろ手のまま、済まなさそうな顔をして付いて来る。
食堂ではさそっくテーブルの周りの椅子を詰めて並べ直し、後ろ手姿の美由紀を真中にして私と祥子とがその左右に座り、孝夫が美由紀の向い側に席をとる。 テーブルの美由紀の前に最初のアルバムを置く。