1
高手小手の紐もすっかり解けて、祥子は上半身を動かして凝りを取る。 それからゆっくり立ち上がり、海に行って海水で汗を洗い流して帰ってくる。 息はもうほとんど収まった模様である。
『もう、祐治さんの紐も解きましょうか』と孝夫が訊く。 祥子は私を見下ろして、『ああ、そうそう。 祐治さんはまだご休息中だったわね』とにやりとする。 私は祥子を見上げて、『この格好じゃ、あまり休息にならなかったぜ』と文句を言う。 しかし、祥子は平然としている。
『文句は言わないこと。 それでも次々と色々な責めが続くのに比べれば、大分休めたでしょう?』
『それはそうだけど』
こういう議論になっては普段でも祥子には敵わない。 まして今は私は、手は後ろ手に脚はあぐらの形に縛られて、身動き一つままならずに、五体自由な祥子を見上げている身の上である。 まともに太刀打ち出来る筈がない。
『ほんとに祐治さんって、行住坐臥がこれすべてプレイという感じですね。 休息までそういう格好でするんですから』と孝夫が難しい言葉を使う。
『それを言うなら、祥子は、と言ってほしいな。 今だって祥子に強制的にさせられているだけなんだから』
『そんなことないでしょう。 祐治さんだって、そう言う生活を期待してここに来たんじゃないの?』
『まあ、そうでないこともないけど』
どうも旗色が悪い。 横で孝夫と美由紀がにやにや笑っている。 いっそのこと、思い切って本音をぶつけてみる。
『そうだね。 こう言う条件の揃った好い所に来ていると、確かに少しでもプレイをしない時間があると惜しいような気がするね』
『そうでしょう。 だから、あたしも張り切って協力してあげてるのよ』
『うん、有難う』
これではどこまで行っても退勢を挽回出来そうもない。
『ところで、祐治さんの紐の方はどうします?』と孝夫が話を戻す。
『そうね。 そもそも今、何時かしら』
『ええ、今は丁度12時を過ぎた所です』
『ああ、そう。 丁度今、祐治さんのご休息の時間が終った所なのね』。 祥子がまたにやりとする。 『それじゃ、このままでまた、本格的なプレイに移ることにしようかしら』
『そんなの駄目よ』と美由紀が言下に反対する。 『もう、お昼のお食事の時間だし、それにそのうちには荒船さんも来るし』
『それもそうね』
美由紀の反対に、珍しく祥子がうなずく。
『それじゃもう、お昼休みにしてあげるわ。 まあ、さっきはあたしのが終るまでって、脚の縛りを解くのも我慢してたようだし』
『へえ。 あの苦行の最中に、そんなことまで聞いてたのかい?』と私。
『ええ、それは聞いてたわよ』
『すごいですね』
孝夫がまた感心した顔をする。
『それで昼休みって、脚の紐を解いてくれると言うのかい?』
『ええ、脚だけでなく、手も自由にしてあげるわよ』
『ふーん。 何だか気味が悪いな』
『まあ、お昼休みだけはね』
祥子はまたにやりと笑う。
『それで、祐治さんも今日は荒船さんとまともに会って下さいね』と孝夫が横で言う。 『この2日ばかり、祐治さんが顔を見せてないので、荒船さん、変に思っているようですから』
『うん』とうなずく。
早速、祥子が手の縛りを、美由紀が脚の縛りを解いてくれる。 その間に孝夫が祥子の炎暑責めに使ったポリ袋や湯上がりタオルを片づけて持ってくる。
2
昼食は別荘に帰って、祥子達が作った冷やし中華そばを庭に持ち出して、木の丸テーブルで摂る。 美由紀はまた両手首を後ろ手に縛り合され、祥子がお給仕している。 早速に話を始める。
『さっき孝夫君が言ってた、行住坐臥、これすべてプレイ、というのね。 考えてみると面白い言葉だね』
『そうね。 美由紀なんか、お食事の時は何時も後ろ手だから、まさにその典型ね』
『あら、いやだ』
美由紀が後ろ手の身体をくねらせる。
2人のやり取りを聞き流して、私は話を進める。
『それで思い出したんだけど、アメリカにボンデージ・ライフという名前の雑誌があってね』
『ボンデージ・ライフ?』
『うん。 ボンデージという英語はこういう綴りなんだ』
私はテーブルの上に指で Bondage と活字体で書きながら、b,o,n,d,a,g,e と口で唱えてみせる。
『それからライフは「生活」とか「人生」とかいう意味でよく使う普通の英語のライフだけどね。 そこでこの bondage という単語は辞書を引くと、奴隷の身分とか束縛とかの意味だと書いてあるけど、でも、bondage and gaggage というような使い方もあるから、まさに日本語で言う緊縛ということになるんだろうね』
『ああ、そう。 でも、ギャッゲイジと言うのもあまり聞かないけど』
『うん、辞書にもあまり出てないけど、要するに gag をすること、つまり、猿ぐつわを咬ませることらしいんだ』
『ふーん』
『だから、bondage life というと、まさに「緊縛生活」、つまり、日常生活、これすべてプレイ、と言うことになるんじゃないのかな』
『ふーん。 祐治さんって、そう言うことも詳しいのね』。 祥子が感心してみせる。 そして、『一体どこで、そんな雑誌を手に入れたの?』と詰問するように言う。
『うん、実は少し前に3箇月ばかり、アメリカの研究所で過ごす機会があってね。 1人での寮生活だったので、週末によくニューヨークまで出掛けてたんだ。 そのとき、42番街のミュージカル劇場が並んでいる近くに、こういう雑誌も置いてある本屋が何軒かあるのを見つけてね。 そこで買い込んだんだ』
『なるほど』
『そこには他にも似たような雑誌はあったけど、これが一番楽しいプレイと言う感じがして、気に入ってね』
『なるほど』。 祥子はまた感心したようにうなずく。 そして、『でも、祐治さんも熱心ね。 そんな所に行ってまで、そういう雑誌をお買いになるんだから』と笑う。
『そんな訳でもないけど』と私も笑う。
『それで、その雑誌がどうかしたんですか?』と孝夫が先を促す。
『いや、特に意味はないけど、さっきの孝夫君の言葉でふと思いだしてね』
『それ、どんなことが書いてあるの?』と、今度は美由紀が興味を示す。 みんなの食事の手が大分おろそかになる。
『うん、それがとてもおとなしいんだ。 きれいな女の子の縛りの写真と、読者からの手紙の形の告白文と、それに数ページの短い読み切りのフィクションとが主な内容、という所かな』
『ふーん』
『縛りも椅子に座って縛られるとか、立ったままとか、まあ精々、軽い逆えびで床にころがされるとかで、吊りの写真も1枚もないんだ』
『ふーん、頼りないわね』
祥子が何だか物足りなさそうな顔をする。
『うん、でもそれでいて、中に出ている写真も告白文もすごく楽しそうなんだ。 ああいうのを見ると、日常的なプレイとしては、こういうのも1つの行き方かな、って考えさせられてね』
『そうね』と美由紀も同感の意を表す。
『つまり、もう』と祥子がにやにやする。 『あたしに責められるのが嫌になったと言う訳なの?』
『いや、そんなことはないよ。 ただ、若いカップルのプレイでは、ああいう行き方もあるんだな、と思っただけさ』
『若いカップル?』
『うん、そうだ。 その雑誌に出てくるのは、結婚前のボーイフレンドとガールフレンドか、または結婚直後の若い2人かの別はあるけど、とにかく、若いカップルの話が多いんだね。 そう言う2人なら、日常的にああいうおとなしいプレイをすることで、けっこう満足出来るんだろうね。 それで奴隷になった生活、と言う意味も含めて、bondage lifeという言葉がぴったりするんじゃないのかな』
『なるほどね。 祐治さんもいいお相手を見付けて、早くその bondage life とやらに入りたい、と言う訳ね』
『いや、僕はそのようなおとなしいプレイだけで満足出来るかどうか、ちょっと自信がないな』
『でも、相手の人がもっと厳しいプレイをしてくれればいいんでしょう?』
『まあ、それはそうかもしれないけど』
美由紀が後ろ手のまま、ちょっと淋しそうに目を伏せる。 我々のグループではタブーとすべき話題にちょっと深入りしたようである。
『とにかく、僕は今のグループ・プレイが一番気に入ってるよ。 これ以上のものは今のところ、ちょっと考えつかないからね』
美由紀がほっとしたような顔をする。 皆がそれぞれに食事を再開する。
3
少しして祥子が話を戻す。
『それで、その Bondage Life とやらに、特に面白い話でも載っていて?』
『そうだね。 大部分の話は家庭的で、特に目覚ましいものはないけど、あ、そうだ、パラパラめくって写真を見て行くと、すぐに気のつくことがある』
『え、それは?』
『うん、それはね。 あちらでは gag、つまり猿ぐつわというと、ボールを口にくわえさせるのがとても多いことなんだ』
『あら、そうなの』
『うん、大体、半分はその方式なんだね。 日本じゃ、その方面の雑誌の中でもあまり見かけないと思うけど』
『そうね、あまり見ないわね』
『うん、とにかく、いろんな写真の中の女の子が、みんなボールを口にくわえて、後ろ手に縛られたり、後ろ手錠をかけられたりしてるんだ。 それも真っ赤なボールだったりして、色彩ゆたかにね』
『まあ、楽しそう。 あたし達もやってみたいわね』
祥子が一人ではしゃぐ。 しかし、美由紀が真面目な顔で具体的な疑問を提出する。
『でも、どうやってボールを吐き出せないようにしてるのかしら』
『そうだね。 僕も写真で見ただけで、細かい所は分からないけれど、みんな口から横に革紐らしきものが延びているから、おそらくは最初からギャグ用の紐付きボールが売られてるんじゃないのかな』
『おそらくそうね』と祥子がすぐに話を引き取る。 『あたし達も捜して、やってみましょうか』
『そうだな。 でも、写真うつりは確かにきれいだけど、実際はどうかな。 僕はやはり日本式の方がいいね』
『そうね。 それに祐治さんにはMセットと菱紐という、素晴らしいギャグがあるし、機会があったら、位でいいわね』
『そうだね』
これで話が一区切りつく。 しかし、私はもう一つ、ぜひ皆に話してみたい話題を思い出す。
『それからもう一つ、その雑誌の1冊に僕がとても興味を持った、小さな記事がのっててね』
『え、それはなあに?』と、また祥子が話に乗ってくる。
『うん、それはやはり、一読者からの手紙の形の文章なんだけど、それに、どこか広い講堂のような場所での女学校の卒業式、とでも言ったような風景で、何列もに横に並べた椅子に揃いのスーツの女の子が並んで座っている所を右前から撮った白黒写真が添えてあってね』
『ああ、そう。 それがどうかしたの?』
『うん、それだけならどうってことはないけど、そのうちで最前列の右はじ近くに並んだ3人ばかりの女生徒が、両手を後ろに回し、黒い布で目隠しして座っているんだ』
『まあ、それは面白そうね』
祥子が体をのりだしてくる。
『そして説明文によると、その3人は、まだ他の出席者が会場に入ってくる前に、その席で両手を後ろ手に縛られ、足首も縛り合され、目隠しされて待機していて、式典はずうっとその格好で参加し、式が終って人々が帰った後で初めて紐や目隠しを解かれた、となっていた』
『ふーん』
『猿ぐつわは?』と美由紀がきく。
『うん、猿ぐつわについては何も書いてなかったし、写真でもはっきりは分からなかったけど、何か簡単な猿ぐつわを掛けられていたようだね』
『それ、一体、どういうことなんですか?』と孝夫が口をはさむ。
『うん、その手紙によると、近頃は bondage がポピュラーになって市民権を得て来た、ということで、その一つの例証として、その写真が添えてあったんだ。 だから、そういう公の行事にそのような bondage を持ち込んでも、行事の運営に支障がない限り、別に騒ぎにもならずに受け入れられている、ということらしいんだ』
『なるほど』
祥子は首を傾げる。
『でもそれ、ほんとかしら』
『そうだね。 話としてはちょっと出来すぎているような気もするね』
『そうね。 写真もその位なら合成出来ないこともないでしょうし』
『うん、確かにあまり鮮明な写真でもなかったから、何とも言えないね。 でも、今、アメリカでは public bondage という言葉もあるそうだから、案外ほんとのことなのかな、という気もしないではないけど』
『そうね』と祥子はうなずく。 そして、『それで、祐治さんはそのプレイのどういう所に興味を持ったの?』と、興味深そうに私の顔を見つめる。
『うん、まず、そういう公開の場所でのプレイという点だね。 そう言う場所でさらしものになるって、考えただけでもぞくぞくっとしてね』
『そうね。 興味深いわね』と祥子がうなずく。
『それから、さぞかし大勢の人から好奇の目でじろじろ見られただろうに、ずうっと目隠しされたままだから、そのことを知ることさえ出来なかった、という、やるせない感じだね』
『解るわ』と、今度は美由紀がうっとりした顔をする。
『もっとも、目隠しされていたから恥ずかしさを我慢し易かった、ということもあっただろうけど』
『そうね。 そう言うこともあるでしょうね』と、また祥子がうなずく。
ちょっと会話がとぎれて、皆がそれぞれに食事を進める。 祥子も美由紀へのお給仕を再開する。
少しして祥子がまた口を開く。
『それで祐治さんには、少なくとも内心では、そういうふうに公開の場所でさらしものにされてみたい、って願望がある訳なのね』
『うん、ないと言ったら嘘になるだろうな。 こういう仲間内でのプレイと違って、羞恥責めの極致だからね』
『そうね。 でも、日本じゃ難しそうね』
『そうだね。 少なくとも日本じゃまだプレイは世間的に認知されてないから、社会の目がうるさいし、ほっておいてはくれないだろうな』
『でも、public bondage って面白いテーマね。 後ででも一度、ゆっくり議論しましょう』
祥子はそう締めくくり、『面白い話題を提供して下さって有難うございました。 また一つ、祐治さんを責める楽しみが増えたわね』と笑う。
『うん、でも、お手柔らかに頼むよ』と私も笑う。
また、皆が食事を進める。
4
やがて、食事が終る。 祥子は美由紀の手首の紐を解き、皆で手早くテーブルの上を片づけ、汚れものを食堂に運んで食事の後片づけを済ませる。
もう、時刻は午後の1時に近い。 『もう、また、荒船さんが来る頃だから、浜に出てましょう』と言うことで、皆でまた浜に出る。 夏の日差しはさんさんと照りつけ、浜の乾いた砂が銀色に輝いている。 踏むと足の裏が熱い。 急いで黒く湿った砂の所まで駆けていって、ほっとする。
先ほどの祥子の炎暑責めの前に撒いた水ももうすっかり蒸発してしまっていて、その場所も焼けた砂がまぶしく輝いている。
『暑いね』と孝夫に声を掛ける。
『そうですね。 午後になって、また一段と暑くなったようですね』
『祥子の炎暑責めも今時分からの方がよかったかな』
『ええ、でもそれはちょっと無理ですよ。 もうすぐ荒船さんが来ますし』
『だから、荒船さんの帰った後でさ』
『駄目よ』と祥子が横で言う。 『さっきは祐治さんの休憩時間だから、特別に奉仕してあげたのよ。 午後はピクニックに行かなければならないし』
『はいはい』と応える。
祥子が馬鹿に張り切っている。 また色々とプランを練っているのだろうなと思う。
海に入り、皆で早速、沖の岩まで行く。 こうやって自由に泳ぐのは今日は初めてである。 やはり気持ちが良い。
岩の上に横のなっていると、『あ、荒船さんの船よ』と美由紀が言う。 確かに右手の岬を丁度今回っているのは荒船さんの船である。 起き上がって皆で手を振って、泳いで浜に帰る。
荒船さんの船が浜に着く。 皆が近寄る。
荒船さんは船から下りるなり、『やあ、今日はみなさん、お揃いで』と言う。
『何時も揃ってますよ』と孝夫が応える。
『でも、この2日ばかり、そちらの祐治さんですか、お顔を見ませんでしたけど』
私は『何時も荒船さんの目の前に居たのに』と、軽い満足感を覚える。
『ええ、2日とも、丁度、ちょっと散歩に行ってまして』
『ええ、そうだそうですね。 で、どのへんへ行かれました?』
これはちょっと困る質問である。
『どこって』と口を濁す。 荒船さんはそれにかまわず、つづける。
『でも、せっかく海岸に来られたのだから、なるべく海に入って遊んで行かれた方がいいですよ』
『ええ、有難う。 なるべく、そうしてます』
『でも山がお好きなら、一度、ご案内しましょうか?』
『ええ、有難う。 でも僕は一人歩きが好きなもんですから』
『そうですか。 でも、よければ何時でもおっしゃって下さい。 私も山を歩くのも好きなので、ご案内しますから』
『ええ、有難う』
『それに、近くにも色々いい所がありますよ。 例えば、D平とか』
『ああ、D平なら』と祥子が話を引き取る。 『今日の午後、みんなで行ってみよう、と言うことになっていますの』
『ああ、今日午後、皆さんでD平に行かれるんですか。 それはいいですね。 祐治さんでなくとも山歩きもいいものですよ』
『ええ、海で泳ぐばかりでも飽きますから』
『それでは、今日は特にすぐ帰らなければならない用事もありませんから、ご案内しましょうか』
祥子が慌てる。
『ああ、有難うございます。 でもそれは結構ですわ。 孝夫もよく知っているそうですから、あたし逹だけで大丈夫です』
『ああ、孝夫さんは何回かいらっしゃったことがありますね』
『ええ』
『じゃあ、私は遠慮しましょう』
荒船さんは簡単に引き下がる。 そして、
『でも、あまり崖っぷちまで行くと危ないですから、注意して下さいよ』
と注意を加える。
『ええ、有難う。 気をつけます』
話が一段落して、『じゃ、荷物を下して』と荒船さんがまた船に上り、下から手を出している我々と荷物の受け渡しをする。 そしてもう一度浜に降りて下ろした荷物を一緒に確認し、次回の注文を聞いて、『じゃ、また明日、今時分に来ます』と言い残して帰っていく。
荒船さんの船を見送って、『ああ、危なかった』と祥子が言う。
美由紀がくすりと笑う。
『荒船さんって、よっぽどご案内したかったのね。 でもちょっと、あたしたちのピクニックのご案内を願う訳にはいかないわよね』
『そうだね』と私も笑う。 『ご案内されたんでは、祥子のせっかくのプランも形なしだろうからね』
『そうよ。 色々とプランを練ってあげてるんだから、覚悟なさい』と祥子は言う。
『はいはい』とわざと恭しく応える。
『さあ、これで祐治さんも免疫になったわ。 あした1日ぐらいはもう顔を見せなくても大丈夫よ』と祥子が張り切る。
『明日も何かあるのかい?』
『まあね』
祥子はまたにやにやする。
『それじゃ、今日の午後はもう海には入らないでしょうから、ここは一応、片づけましょうか』と孝夫が言う。
『そうだね』と言うことで、ビーチパラソルを閉じ、敷物も折りたたんで、皆で荷物を持って別荘に帰る。