1
いよいよ貨物発送プレイの当日がくる。 今日は10月2日の木曜日。 ちょうど皆の試験休みが重なったので、第4回の月例会を3日間に拡大して、いよいよ懸案の貨物発送プレイを実行しようということになったのである。 私は簡単な身の回り品を小型の旅行用バッグに詰めて、手に提げて孝夫の家に行く。 もう祥子と美由紀が来ている。 美由紀はもう両手を腰の後ろに回している。
顔を見るなり祥子が笑顔で声を掛けてくる。
『祐治さん。 今日は水分は控えてきてくれたでしょうね』
こちらも笑顔で応える。
『うん、用心して昨夜の9時からノーアイに入っているよ。 この前の西伊豆から帰る日の朝の経験ですっかり懲りたからね』
『そうね。 あれはちょっとひどかったわね』
祥子がまた笑う。 美由紀も横で笑っている。 その美由紀の後ろ手姿を見て、改めて訊いてみる。
『ところで美由紀は、いつから後ろ手になってるの?』
『ええ、あの』
美由紀は恥ずかしそうにちょっと言いよどむ。 そして少し顔を伏せて応える。
『今朝、マンションを出るときから。 支度をして2人一緒に出ようとしたとき、祥子が「また、みんなと会うのだから、きちんとした姿で行きましょうね」と言って、あたしが何も言わないうちに紐を出して縛っちゃったの』
『すると祥子が2人分のバッグを提げて、電車に乗ってきたのかい?』
『いいえ。 荷物は昨日、孝夫さんが、ついでがあったからって車でマンションに寄ってくれて、先にここへ運んどいてくれてたの。 だから祥子は小さな買物袋を一つ持ってただけ』
『なるほど』
『出がけに祥子がケープを肩からかけてくれたけど、ちょっと季節外れで、電車の中で恥ずかしかったわ』
美由紀は肩をすくめる。
祥子が横でちゃちを入れる。
『そんなこと言ったって、美由紀も結構楽しそうだったじゃない』
『そんなことないわ』
美由紀が肩をゆすって口をとがらせる。 孝夫が横でにやにや笑っている。
ほどなく玲子が来る。 玲子も美由紀が後ろ手姿なのを見て、『あらもう』と言って軽く笑う。
『美由紀は今朝、マンションを出るときから後ろ手になってるんだって。 とにかく僕達に会うので、姿をきちんと整えて来たんだそうだ』
『姿をきちんと整えて?』
玲子はちょっと聞き返し、
『そうね』
とまた笑う。
『違うわよ』と美由紀が後ろ手の身体を揺すり、口をとがらせる。 『それ、あたしが言ったんじゃないわ。 祥子がそう言って勝手に縛っちゃったのよ』
『どちらでもいいでしょう?』と祥子。
『でも違うわよ』
孝夫がまた横でにやにや笑っている。
つづいて邦也が顔を見せ、後ろ手の美由紀を見て言う。
『ああ、もうプレイに入ってるのかい』
『ええ、ちょっとした前プレイにね』
この祥子の言葉には今度は論争もなく、そのまま終る。
こうしてメンバーの6人全員が応接室に顔を揃える。 時刻は朝の8時半の少し前である。 祥子と玲子が『ちょっとお茶を用意するわね』と言って出て行き、玲子が茶碗5つと急須とを載せたお盆をささげ持ち、祥子が茶筒とポットを持って戻ってくる。
祥子が笑いながら言う。
『祐治さんは飲まない方がいいから、その分の茶碗は持って来なかったわよ』
『ああ、いいよ』
『それから、美由紀もあまり飲んじゃ駄目よ』
『ええ』
美由紀は素直にうなずく。
玲子が慣れた手付きでお茶を入れ、茶碗を配る。 皆が応接室のソファーやアームチェアに腰を下ろし、お茶を一口飲む。 美由紀には祥子が飲ませている。
私の右前の方角には、部屋の隅に例の箱が置いてある。 今日はいよいよあの箱に詰められて何も知らない運送屋に渡されるんだ、と思うと胸がどきどきする。
祥子が笑い顔で声を掛けてくる。
『さあ、今日からいよいよ待望の貨物発送プレイを含む合宿が始まるんだけど、祐治さんの御感想はいかが?』
『そうだね』
私はちょっと考えて、真顔で応える。
『こういうプレイの夢があるという話を出したのが西伊豆の合宿の時で、その時はまだ将来実現するかどうかも分らない、本当の夢としか考えてなかったんだよね。 それがその時からまだ1月半しか経っていないのにもう実現するなんて、それこそほんとに夢のようだ』
『そうですね』と孝夫も言う。 『ほんとに祥子さんの実行力ってすごいですね』
しかし、祥子は普段に似合わず、ちょっとばかり謙遜してみせる。。
『いいえ、今度の合宿では、ほとんどの準備をみんな孝夫がやってくれたのよ。 最大の功労者は孝夫だわ』
私はそれには構わず、率直に感想を述べる。
『いずれにしても、夢が叶えられてとても嬉しいよ』
『そうね。 いかにも祐治さんらしい感想ね』
皆がうなずく。
『それで』と邦也が私に言う。 『祐治さんには、このプレイに対する不安は全然ないんですか?』
『いや、不安がないと言えば嘘になるけど、是非やってみたいという魅力の方が不安よりもずっと強い、ということなんだろうね』
『なるほど、そうですか』
邦也はまだ納得のいかないような顔をしている。
『ところで、邦也君の感想はどうなんだい?』
『そうですね。 とにかく、この世紀の大プレイに立ち合うことが出来て大満足です』
『世紀の、は大袈裟ね』と祥子が笑う。 そして、いたずらっぽく訊く。
『それで邦也さんには、ご自分が定期便の貨物になってトラックで運ばれてみたい、という気は全然起こらないの?』
『いや、僕にはまだとてもとても』
邦也が慌てて顔の前で手を振る。 皆がどっと笑う。
2
皆が一応、お茶を飲み終る。 改めて祥子が皆を見回して切り出す。
『それではまず、今度の合宿について、実務的な打ち合せをしましょうか』
『うん、それがいい』
皆が賛成して、打合せが始まる。
まず、祥子が孝夫に向かって始める。
『それでまず、運送会社の方との話はもう完全に付いてるのね』
『ええ、ついてます。 頼んだ運送会社はW運送というんですけど、今日はそこのトラックが11時すぎに荷物を取りに来ることになってます。 そして、荷物は一度、W運送のトラック・ターミナルに行き、そこで他の荷物と積み合されてS湖まで運ばれ、寮に届けられるんだそうです。 恐らくは夕方の6時か7時頃、遅くとも夜の8時までには寮に着くそうです』
『ああ、そう、ご苦労さま。 それで、寮の方は?』
『ええ、その方は僕達5人が車で午後3時頃までには行っていて、地元で管理をお願いしている人から鍵を受け取って中に入るように連絡してあります』
それを聞いて、私は思わず口に出す。
『なるほど、計画は順調に進んでるんだね。 いよいよ後に引けなくなったね』
『ええ、そうよ。 祐治さんは満足でしょう?』
『うん、まあね』
2人で顔を見合わせて笑う。 邦也がまた感心したような顔をしている。
改めて祥子が皆を見回して言う。
『さて、今度の合宿の一番の主題が、祐治さんを箱に詰めて街の運送会社に運んで貰うことにあるのは、もう合意済みよね。 予定としては、今日、運送会社のトラックで寮に運んで貰って、今晩からあさっての朝までを寮で遊んで、その日のうちにまた同じ運送会社のトラックで祐治さんをこの家まで運んで貰って、ここで解散ということにしたいけど、それでいいわね』
『そうすると』と邦也がいう。 『祐治さんは往復とも箱に詰められて、街のトラック便で運んで貰うことになるのかい?。 きびしいな』
『ええ。 W運送にはもうそのように頼んであります』と孝夫。
そこで祥子が、また笑いながら言う。
『何なら帰りだけでも邦也さんが代ってくれてもいいわよ。 そのように祐治さんに頼んであげましょうか?』
『いいよ、いいよ。 遠慮するよ』
邦也がまた慌てて手を振って辞退する様子に、皆がどっと笑う。
祥子がまた話を始める。
『それで、祐治さんはこの前の会の終りに合意したように、この3日間はお人形にしたり人間に戻したりして、色々とプレイをしてみたいんだけど、それでいいわね』
皆がうなずく。
『それで、まず最初に貨物として発送する時はフランス人形のマゾミちゃんになって貰って、生命のない物品として扱いたいんだけど、どうかしら。 荷造りして発送するにしては、その方が感じが出るでしょう?』
『賛成』とまず邦也が言う。
『邦也さんはいいでしょうけど、祐治さんはどう?』
『うん。 僕もこの間の合宿で大分マゾミちゃんとして扱われることに慣れたから、それでいいよ』
そこで美由紀が発言する。
『それで祐治さんにマゾミちゃんになって貰うとすると、また例の口枷をはめるんでしょう?』
『ええ、その積りだけど。 どうして?』と祥子。
『そうすると、向うで人間に戻って貰うとしても、口枷ははずせないわよね?』
『そうね。 はずす設備がないのだから、恐らくそうね』
『とすると、東京に帰るまでは何も口からは入れられないから、昨夜の9時からだとすると、ノーアイが72時間を越えることになりそうだけど、祐治さん、大丈夫かしら』
『そう言えばそうね』
祥子はうなずく。 そして私の顔を見て訊く。
『どうお?、祐治さん』
『うん、そうだな』
私はちょっと考えて答える。
『丸3日間のノーアイは一度だけ経験がある。 その時は大分喉が渇いたけど、そんなに消耗した気はしなかった。 まあ大丈夫じゃないかな』
『ああ、そう。 じゃ、大丈夫ね』
伸子はうなずく。 そして言う。
『それに喉が渇くだけなら、今度の口枷にはちょっと細工がしてあって、水分くらいなら補給できるようになってるけど』
『え、どんな細工だい』
『それは後で現物をお見せして説明するわ。 とにかく、お水や牛乳くらいなら大丈夫、飲めるわよ』
『うん、それなら何も問題はないんじゃないかな』
『でも、そうは言っても、ノーオウとの関連もあるから、やたらに補給はしないわよ』
『うん、大丈夫だ』
『それじゃ、丸3日ぐらいならエネルギー源は補給しないでも大丈夫だという、祐治さんの言葉を信用するわ。 ひどく消耗しているようだったら、あさって、また箱に詰める前に何か液体の栄養物を補給することも考えるけど、まあ、頑張ってね』
『うん』
これでその話は片付く。 祥子はまた皆を見回して言う。
『じゃ、そういうことで、まずはマゾミちゃん誕生ということにして、お人形さんを貨物に荷造りして発送するプレイをすることにしたいけど、外の人もみんないいわね』
皆がうなずく。
『じゃ、そうさせて貰うわ。 これで第一の主題のプレイに関しては大筋は決まったわね。 向うに行ってからのプレイについても幾つかのプランを考えているけど、それはその都度、お話しすることにするわ』
また皆がうなずく。
話が一段落して、ほっとした空気が流れる。 そこで今度は孝夫が言う。
『もう、打ち合せておくことはありませんかね』
『そうね』
祥子はちょっと考えて、念を押すように言う。
『孝夫は例の速乾性のセメントは用意して下さったわね?』
『ええ、50キロの袋を1袋だけですけど、もう車に積み込んであります』
そこで私が訊く。
『やっぱりコンクリート詰めのテストはするのかい?』
『ええ、そうよ。 こんないい条件の機会はめったにないわよ。 これも今度の合宿の大きなテーマの一つよ』
祥子がすました顔で言う言葉に、玲子ただ『ちょっと怖いわね』と笑う。 しかし、美由紀は言う。
『あたし、あんまり厳しいプレイだと、我慢できなくなりそうだけど』
『大丈夫よ。 口まで埋めて固めたりはしないから』
笑いを含んでそう言う祥子の言葉に、私もちょっと驚いて訊く。
『えっ、そんなプレイもあるのかい?』
『ええ、鼻だけでも外に出しておけば、命に別状はないでしょう?』
『すごいな』
邦也がまた嘆声を上げる。
『でもあたしは、そんな厳しいプレイは少なくとも今度の合宿ではしないって言ってるのよ』
『でも』
美由紀はなおもちょっと渋ってる。
『それでも駄目だったら、また、シーミュータイムを宣言するわよ。 そうすれば、美由紀も自分を納得させられるでしょう?』
『そうね』
美由紀がちょっと頭をかしげる。
その機を捕らえて、話題を変える。
『ところで、この前、祥子の言ってた美容院のマダムとは、その後も話が進んでいるのかい?』
祥子は答える。
『ええ、おとといの火曜日にアルバイトで行った時、また、その話が出たの。 前はショーウインドの棚に首を固定して飾る話だったけど、この間はちょっと、コンクリート台座付きの首の像、というアイデアの話をしたら、マダムは「まあ、そんな素晴らしいものがほんとに造れるの?。 出来ればその方が芸術的でいいわね」って、すっかり乗気になってたわ』
『ふーん。 するとますます実現可能性が高まってきた、という訳かい』
『ええ、そういうことになるわね』
『でも、実行するかどうかというような具体的な話は、まだしてないんだろう?』
『ええ、それはまだアイデアだけだと言ってぼかしてあるわ。 でも、マダムは本気なんじゃないかしら』
『なるほどね。 何だか後に引けなくなりそうだな』
『でも祐治さんは、その方が楽しいんじゃないの?』
『まあね』
私はまたにやにやする。 横でまた邦也が感心した顔をする。
3
その時、私は一つのことを思い出して持ち出す。
『それでシーミュータイムで思い出したんだけど、今度の会ではまだ、祥子を女王様にえらぶ宣言をしてなかったね』
『ああ、そうですね』と孝夫。 『あれはシーミュー期間毎に、メンバーの合意によって選ぶんでしたね』
『それじゃ、早速、手続きをとろう。 この話は祥子は当事者だからやりにくいだろうし、皆も大体同意していることだから、話を早く進めるために僕が進行がかりを勤めるよ。 みなもいいね』
『ええ、お願いするわ』
私は始める。
『それでまず、今度の合宿の3日間をシーミュー期間とすることについては、みんな異議はないね』
4人がまた『はい』とか『ええ』とか応える。 しかし、邦也だけが『そうだね』と言う。
そこで邦也に訊く。
『邦也君は何か異議があるのかい?』
『いや、特に異議って訳じゃないんだけど、出来れば今度の合宿では祐治さんのプレイに専念したら、と思って』
祥子が口をはさむ。
『すると、邦也さんはSの役柄だけをしたいっていうの?』
『うん、早く言えばそういうこと』
『あたしが責めてあげるんでも、おいや?』
『いや、とんでもない。 大いに結構です』
邦也が慌てて、皆がまたどっと笑う。
そこでまた、私が話を引き取る。
『今度の合宿では特にシーミュー期間を設定しなくても予定しているプレイは出来ると思うけど、でも設定しておいた方が気分が出ていいんじゃないのかな?』
『ええ、まあ、そうでしょうけど』
『それに邦也君も祥子からMの教育を受けて解ってきたと思うけど、プレイで自分の意志や願望に関係なしに無理やり責められると、その時は苦しくても後でとても懐かしくなるものなんだよ。 そしてそういうプレイを受けることを自分に納得させるのには、やはり女王様がその考え一つで何でも命令できて絶対に逆らえない、というプレイの場を設定して自分をその中に置くのが、一番うまい方法で、プレイを楽しむ最上の方法だと思うけどね』
『ええ』
邦也はうなずく。
『そこで、それを集団的に実現したのが我々「かもめの会」の規約であり、シーミュー期間なんだよ』
『なるほど、確かにそうですね』
邦也は深くうなずく。 そして言う。
『じゃ、僕も意見を変えて賛成します』
邦也が納得する様子を見て、孝夫が感心したように言う。
『なるほど、シーミュープレイの哲学ってそんなものなんですか』
『いや、哲学ってほどのものではないけどね』
私はちょっとにやにやする。 しかし、美由紀はいう。
『でも邦也さんにはむしろ、このまま進むと自分がMに溺れてしまいそうだ、という不安があったんじゃないかしら』
『そうだね』
邦也はちょっと考える。 そして言う。
『自分でもよく分らないけど、この頃、とても責めを受けるほうに気持が惹かれて、少し不安だったことは確かだね』
『それはね』と祥子が笑いながら彼女流の解説を加える。 『邦也さんはやっと本来の自分に目覚めてきたのよ』
邦也が頭をかく。 また皆が笑う。
私は改めて皆を見回して念を押す。
『それじゃ、シーミュー期間の設定には全員合意したとしていいね?』
皆が『はい』とか『ええ』とか応えてうなずく。
『それで次に、女王様には祥子を選ぶことについても、みんな賛成して貰えるね』
今度も全員がすぐに『はい』とか『ええ』とか応えて賛成する。
『それでは、今から明後日10月4日の午後12時までシーミュー期間を設定することを宣言し、祥子を女王に選びます』
皆がぱちぱちと手をたたく。
宣言が終わって、皆がほっとして身体を楽にする。 邦也が訊く。
『いま、祐治さんは午後12時まで、って言ったね。 そうすると今度の合宿は、夜中の12時までつづけるのかい?』
『いや』と答える。 『おそらくその前に解散になるだろうけど、何時解散、って決めておくのが面倒だったからね。 それにシーミュー期間と言っても、女王様がシーミュータイムを宣言しない限り、特に意味を持たないからね』
そこで祥子が、『そうね』、と口を挟む。 そしてまた、いたずらっぽい顔をして言う。
『もしお望みなら夜中の12時までシーミュータイムを掛けっぱなしにして、邦也さんだけを特別に可愛がってあげてもいいわよ』
『いや、結構です』
また邦也が慌てて打ち消す。 皆がまたどっと笑う。 私はつけ加える。
『それから特にシーミュータイムをかけなくても僕には何でもプレイが出来るように、また包括的同意を与えておくよ。 そうすればシーミュータイムを掛ける回数も減って、邦也君のご希望にも副えると思うし』
しかし、今度は邦也もいう
『いや、僕はもう宗旨を変えました。 いくらシーミュータイムを掛けて下さっても結構です』
『まあ』。 祥子は笑う。 『ずいぶん、物解りがよくなったわね』
そして改めて言う。
『でも、あたしもなるべくシーミュータイムを掛けずにすますように心掛けるわ。 これは伝家の宝刀として抜かずに持っていたほうが、プレイの雰囲気をつくるのに有効でしょうからね』
皆がうなずく。
『それじゃ、これで女王様を選ぶ手続きが終ったから、あとは女王様に任せるよ』
『ええ、有難う。 それじゃ、あたし、女王として、今度の合宿を皆が最大限に楽しめるように努力するわ。 みんなもよろしく』
『うん、こちらこそよろしく』
皆がまたぱちぱちと手を叩く。
『それでは、もう打ち合せはすっかりいいわね』と祥子が皆を見回して念を押す。 皆がうなずく。 祥子が付け加える。
『今度の合宿では、もちろん祐治さんが主役だけど、美由紀や邦也さんにも相応の活躍をして貰う積りでいるから、よろしくね』
邦也が首をすくめる。